東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻酒井・泉研究室

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時間・空間スケールをつなぐマルチスケールシミュレーションの開発と材料強度問題への応用

有限要素法・転位動力学・分子動力学・電子状態計算を組み合わせたマルチスケールシミュレーションの開発を行っています。
特に、時間スケールと空間スケールのギャップの問題を克服する手法開発に主眼を置いています。
開発されたシミュレータは、半導体分野や電子デバイス分野の転位生成/進展現象・剥離現象などに応用されています。 マクロスケール(連続体)とナノスケール(原子系)をつなぐためには、mからnm、secからnsecまでの9桁のギャップを克服しなけばなりません。
空間スケールの克服のためには、有限要素法-分子動力学シミュレータを開発し、薄膜の剥離問題へと適用しています。
図1はナノインデンテーションによる薄膜の剥離試験モデルで、下部が有限要素法でモデル化されています。
図2は、計算結果であり、実験と同様の位置で剥離が起こっています[1]。
時間スケールの克服のためには、Nudged Elastic Band法に基づいた反応経路探索の手法開発と応用を行っています。
図3は、シリコンのコーナーからの転位生成問題へ適用した例で臨界応力時(Athermal stress)の転位発生例です[2]。
図4は、転位生成の活性化エネルギの応力依存曲線であり、正解で初めて、Shuffle-set転位((111)面の広いほうの平面に位置する転位)と Glide-set転位((111)面の狭いほうの平面に位置する転位)の比較を可能にし、低温・高応力ではShuffle-set転位、高温・低応力では Glide-set転位が生成する実験結果を理論的に支持する結果を得ました[3]。
さらに、この結果を転位動力学と組み合わせることによって、その後の進展・増殖課程を扱うことが出来ます(図5)[4]。

図1 ナノインデンテーションによる薄膜の剥離試験のFEM-MDモデル


図2 ナノインデンテーションによる薄膜の剥離シミュレーション結果


図3 シリコンのコーナーからの転位生成の分子動力学計算


図4 転位生成の活性化エネルギの応力依存曲線(Glide-set転位とShuffle-set転位の違い)


図5 半導体素子の転位動力学シミュレーション


参考文献
[1] S. Hara, T. Kumagai, S. Izumi, S. Sakai, “Multiscale analysis on the onset of nanoindentation-induced delamination: Effect of high-modulus Ru overlayer”, Acta Materialia 57 (2009) pp. 4209-4216.
[2] Satoshi. Izumi, Sidney. Yip, “Dislocation Nucleation from a Sharp Corner in Silicon”, J. Appl. Phys. 104 (2008) 033513.
[3] K. Shima, S. Izumi and S. Sakai, “Reaction Pathway Analysis for Dislocation Nucleation from a Sharp Corner in Silicon: Glide Set versus Shuffle Set”, J. Appl. Phys., 108 (2010), 063504.
[4] S. Izumi, T. Miyake, S. Sakai, H. Ohta, “Application of three-dimensional dislocation dynamics simulation to the STI semiconductor structure”, Materials Science Engineering A, 395,1-2 (2005) pp.62-69.

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