東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻泉・波田野研究室

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マルチスケール解析による路面-タイヤ間の摩擦係数評価法の確立

自動車の燃費向上にはピストン-シリンダー間の摩擦損失の低減が必須です。潤滑剤の粘性を下げると運転時は低摩擦となりますが、摺動速度が小さくなる始動・停止時やピストンの上・下死点で固体間摩擦が発生し、正味の摩擦損失は増加します。この理由から固体間摩擦の低減技術が期待されていますが、固体間摩擦には解明されていない点が多く、数値解析によるメカニズムの解明が求められています。

固体間摩擦はナノスケールからマクロスケールまでのラフネスが影響するマルチスケールの現象です。固体間摩擦解析に有限要素法(FEM)や分子動力学(MD)の適用が期待されていますが、FEMは凝着のような原子レベルの現象を扱えず、MDはマクロスケールのラフネスを扱えません。両者の利点を生かし、ごく一部の真実接触領域近傍をMDで、他をFEMでモデル化するFEM-MD連成解析手法が期待されていますが、既存手法はモデリングや境界条件の制約のためにそのまま適用できません。

そこで大規模な固体間摩擦解析のためのFEM-MD連成解析手法の開発を行いました。

以下は本研究で提案した連成解析手法を2つ紹介します。 一つ目の手法はまず外力の作用による並進運動を再現するFEM-MD連成解析手法を提案しました。

既存手法では,MD層(Region1)とFEM層(Region4)の間に,原子と節点が共存する遷移層(Region2,Region3)を設け、この領域内で変異の受け渡しを行っていました(Fig. 1)。しかし既存手法だとRegion3の固定原子の影響でRegion2の原子の変形に限界があり,外力の作用に対して大変形の一種である並進運動を再現できません.そこで本手法ではRegion2の原子の並進運動がRegion3の固定原子に影響されないよう,Region2とRegion3の間に新たな遷移層を設けます(Fig. 2).ここで遷移層内の節点と原子が独立していると,両者の運動のわずかなずれから非物理的な振動が発生してしまいます.そこで遷移層内では,原子速度と節点速度の差に比例する減衰力を原子に与えることで,原子の運動と節点運動を同期させ、並進運動を実現させました。

Fig. 3はラフネスを有するAl間の摩擦解析のモデル概観です。 下の動画1は、摩擦解析の結果です。動画の上部は半透明化、変位量でカラーリングしています。

摩擦解析では時間発展とともに接触領域が移動するため、接触領域近傍のみをMDでモデル化する場合、MD領域も移動する必要があります。そこで接触領域の移動と共にMD領域も移動させる連成解析手法を提案しました。Fig. 4はその手法を用いたAl間の摩擦解析のモデル概観です。下の動画2は摩擦解析の結果です。


Fig.1 従来手法


Fig.2 本手法


Fig.3 ラフネスを有するAl間の固体間摩擦解析のモデル概観


Fig.4 Al間の固体間摩擦解析のモデル概観

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